AI時代における Fair Source Software

Article by: Chad WhitacreGavin Zee

 
 
 

最近、AIの存在を感じていますか?ええ、もちろん私たちもです。生成AIはソフトウェアの既存の前提を揺るがしており、それはライセンスにも及びます。そして当然ながら、さまざまな「意見」を生み出しています。

Sentry はソフトウェアライセンスについて長い間、明確な考えを持ってきました。2008年には無ライセンスのサイドプロジェクトとして始まり、その後 BSDBSL へと移行し、独自ライセンスである FSL を策定しました。

そして直近では2024年、私たちは Fair Source を立ち上げました。これはソース公開型ライセンス( FSL を含む)の中で「シンプルな非競争条項」と「最終的なオープンソース化」を両立させる、新しい業界ポジションを確立するためのものです。Fair Source の採用は現在拡大しています

では、AIによって何が起きているのでしょうか。そしてソフトウェアライセンスにはどのような影響があるのでしょうか。特に Fair Source は今でも意図通りに機能しているのでしょうか。また企業にとって安全な選択肢であり続けているのでしょうか。

結論から言えば「はい」なのですが、詳しくご紹介いたします。

 

 

新しいAIの転換点

Andrej Karpathy の言葉を借りれば、この変化は「通常の進歩のように徐々に起きたのではなく、まさに昨年12月に起きた」ものです。

2025年の最新世代AIモデル(11月24日の Opus 4.5、12月11日の Codex 5.2)は、初めて「単体のエージェントとして依存可能なレベル」に到達しました。

これにより、VS Code や Cursor のような従来の IDE 内での高度なオートコンプリートではなく、Claude Code や OpenCode のような環境で独立したエージェントとして動作することが可能になりました。

さらに、オープンソースのAIパーソナルアシスタントである OpenClaw が爆発的に普及しました。これは「vibe-coding(コードを読まずに出荷する)」の現実性と、「コードを書く以上のことをエージェントに求める需要」の両方を示しています。

「スター履歴」と題されたグラフは、2014年から2026年までのfacebook/reactとopenclaw/openclawのGitHubスター数を比較したものです。Reactは着実に成長し、約24万スターに達していますが、OpenClawは2026年頃に急激に増加し、30万スター近くに達しています。

リリースからわずか3ヶ月で、OpenClaw は React を超え、史上最も人気のあるオープンソースプロジェクトとなりました(スター数も正当なもののようです)。このカンブリア爆発的な変化は、ソフトウェア業界だけでなく社会全体に問いを投げかけています。

ライセンスという観点では、AIは何を覆しているのでしょうか。

 

 

標準モデル

1970年代以降、国際社会はソフトウェアを「著作権の観点における文学作品」とみなしてきました(WIPO FAQ)。これは、いわゆるソフトウェアライセンスの「標準モデル」の基盤を成しています。すなわち、人間がソフトウェアを書き、その著作権は法律によって自動的に認められるというものです。著作者はそのソフトウェアの使用、改変、配布などを他者に許可する自由を持ちます。そして、そのための法的手段がライセンス契約です。

ライセンス契約のうち、ごく一部は「Open Source Definition(OSD)」の基準を満たしています。これは、1998年以降、Open Source Initiative(OSI)によって維持されている文書です。(OSIは「Open Source」という用語について法的な商標権は持っていませんが、社会的・歴史的には明確な正当性を持っています。)これらのライセンスのもとで提供されるソフトウェアは、オープンソースソフトウェア(OSS)と呼ばれます。

また別の一群のライセンスは、「Fair Source Definition(FSD)」の基準を満たしています。これは、私たちが2023年に策定した文書であり、企業がコアとなるソフトウェア製品を安全に共有できるよう促す、オープンソースを補完する運動である Fair Source を立ち上げるためのものです。これらのライセンスのもとで提供されるソフトウェアは、Fair Source Software(FSS)と呼ばれます。

 

オープンソース

フェアソース

 読む・実行・改変・配布が可能 

 読む・実行・改変・配布が可能 

 

 シンプルな非競争条項あり

 

 最終的にオープンソース化

 

完全性のために付け加えると、MicrosoftのSoftware License は、OSD にも FSD にも当てはまらないライセンスの一例であり、そのもとで公開されるソフトウェアは OSS でも FSS でもありません。

実務においては、ほとんどの企業は自らの目的に合った適切なライセンスを慎重に選び、他者のライセンスも尊重しています。たとえば Sentry では、ソフトウェアライセンスに関する包括的な社内ポリシーを持っています。また、利用しているソフトウェアのライセンス遵守を管理するために FOSSA を使用しています。もちろんそれにとどまらず、私たちは利用している OSS のライセンス要件を超えて、Open Source Pledgeのメンバーとして(これも私たちが立ち上げたものです。)、そのメンテナに積極的に資金提供も行っています。

 

 

AIがライセンスを揺るがす仕組み

LLM は少なくとも次の3つの方法でソフトウェアライセンスを揺るがしています。

  • LLM は公開されているソースコードをライセンス条件をほとんど尊重することなく学習している。これは「フェアユース」なのか。
  • LLM はライブラリの再実装を非常に容易にし、コピーレフトライセンスを無意味にしてしまう可能性がある。
  • LLM の出力は著作権保護の対象にならない可能性がある。

 

特に2つ目と3つ目は、「12月の飛躍」以降、より深刻な問題となっています。それぞれを順に見ていき、そのうえで Fair Source ソフトウェアへの影響を考えます。

 

もう後戻りはできない

LLM は私たちのコードのますます多くを生成していますが、それはどのように学習されたのでしょうか。

それは公開されているソースからです。そしてほぼ確実に言えるのは、LLM はライセンス要件を遵守していないということです。GPL のような強い制約を持つコピーレフトライセンスであれ、MIT や BSD のような帰属表示程度の緩やかな制約であれ同様です。

あなたのコーディングエージェントが提案に帰属表示を付けてきたのは、いつが最後だったでしょうか。しかしこのようにLLMによって利用されてしまっている現状に対して、今さら何ができるのでしょうか。

書籍、音楽、写真といった他の分野では、著作権侵害を理由に LLM 提供企業を訴える動きが見られます。これらの訴訟はまだ裁判所の判断には至っていないものの、一部は金銭的和解に至っています。

しかし、これらのメディアとオープンソースソフトウェアの間には重要な違いがあります。前者には、著作権侵害にあたるような行為を広く許容する明示的なライセンス条項は存在せず、その権利は本質的に「技術中立的」に制限されています。そのため、著作権侵害や契約違反を主張する議論は、はるかに成立しやすいのです。

一方で、開発者が LLM 提供企業に対して著作権を行使しようとする試みも見られますが、具体的なコピーコードの証拠を提示する難しさから課題に直面しています。これはモデル企業側の「フェアユース」主張を後押しする結果となっています。さらに、侵害が「コードのコピー」ではなく、「既存ソフトウェアをもとに LLM が完全に書き直した派生作品の生成」である場合はどうなるのでしょうか。

 

再実装は止められない

Next.js をめぐる問題は、業界内で長年の緊張関係を生んできました。Next.js は非常に人気の高いフレームワークであり、形式的には MIT ライセンスのもとでオープンソースですが、実際には特定のホスティングプラットフォーム上でしか第一級の体験が得られない構造になっています。

他のプラットフォームで Next.js アプリを動かすために OpenNext というプロジェクトが存在しますが、いくつかの課題を抱えています。こうした状況を受けて、Cloudflare の Steve Faulkner は「vinext」という新しいプロジェクトを発表しました。これは Vite フレームワーク上で Next.js の API を再実装するもので、OpenNext よりも高い互換性を提供します。特筆すべきは、彼がこれをエージェントによるコーディングでわずか1週間で実現した点です。

この出来事を受けて、Steve Ruiz は vinext の主要なベースラインとなっていた tl;draw のテストスイートを非公開にすることを冗談めかして提案しました。しかし、Malte UbeGergely Orosz のような人々はこれを真に受けました。それは AIエージェントによってコーディングコストが大幅に下がった現在、どれほど不確実性が増しているかを示しています。

Next.js は MIT ライセンスであるため、Cloudflare がこのような再実装を行うこと自体は問題ありません(帰属表示を行う限りにおいて)。

chardetリポジトリのGitHubイシュー#327のスクリーンショット。そこには「プロジェクトを元のライセンスに戻すよう丁重に要求します」というコメントがあり、1000以上の親指を立てた絵文字を含む多くのリアクションが寄せられている。
より大きな論争を呼んだのは、長年使われてきた Python ライブラリ chardet の再実装でした。長年メンテナンスを行ってきた開発者は、善意に基づいて「クリーンルーム」方式で再実装を行いました。問題となったのは、その後、元の著者が選択していた LGPL ではなく、MIT ライセンスで公開したことです。

彼は、「これはライブラリのコピーを改変したものではない(LGPLの文言)」ため、LGPL の条件は適用されない。あくまでゼロからの再実装である」と主張しました。対象となった LLM の学習データに chardet が含まれている可能性はありますが、メンテナは新しいコードが旧コードベースに由来しないことを、メトリクスに基づいて説明しています。

では、LLMによって生成されたコードの法的地位はどうなるのでしょうか。

 

電気羊に著作権はない
AIが生成したシーン。錆びた線路の脇で羊が草を食み、その線路は紫色の花が咲くツタに覆われた石造りのトンネルへと続いている。トンネルからは暖かい日差しが差し込み、遠くには人影が浮かび上がっている。

この10年間、Stephen Thalerは、自身の「Creativity Machine」がシミュレートされた臨死体験の最中に幻覚的に生成した画像について、その機械に著作権を帰属させることを認めさせようとしてきました(ええ、かなり深い話です)。

2週間前、アメリカ合衆国最高裁判所は Thaler の事件の審理を拒否し、著作権保護を受けるためには重要な人間の関与が必要であるとする下級審の判断をそのまま維持しました(EUにも同様の要件があります)。米国著作権局もまた、現在進行中のAIに関する取り組み基本方針(p.2)に沿って、どのようなものに登録を認めるかという点で、この立場を裏付けています。

著作権局の見解では、著作権が保護できるのは人間の創造性の産物である素材に限られるという点は、すでに十分に確立されています。最も根本的には、憲法および著作権法の両方で用いられている「著作者」という用語は、人間以外を含まないものです。

したがって、今年1月の著作権適格性に関する報告書が次のように述べているのも不思議ではありません(p. iii)。

  • 著作権は、純粋にAIによって生成された素材、あるいは表現要素に対する人間のコントロールが不十分な素材には及びません。
  • AI生成の出力に対する人間の関与が著作者性を構成するに十分かどうかは、個別の事案ごとに分析される必要があります。

 

現在、争点は「十分な人間のコントロール」の定義へと移っています。しかし、この1月の報告書はすでに重要な線引きを行っています。すなわち、「プロンプトだけでは、AIシステムの利用者をその出力の著作者とするに足る十分な人間のコントロールを提供するものではない。プロンプトは本質的に、保護されないアイデアを伝達する指示として機能するにすぎない。」(p.18)

もしプロンプトが考慮されないのであれば、人間によるコードレビューはどうでしょうか。レビューには、人間が著した重要な変更が伴う必要があるのでしょうか、それともコードをレビューするだけで十分なのでしょうか。

それはどのように立証されるのでしょうか。もし人間のメンテナーがあるコードは見るが別のコードは見ない場合、見たコードには著作権があり、見ていないコードにはないのでしょうか。そもそも、人間によるコードレビューがまったく行われなくなるまで、あとどれくらいなのでしょうか。

AIによって生成されたコードを著作権の枠内にとどめておくものは、ほとんど存在しないように見えます。

 

 

Fair Source なら問題なし

Fair Source は企業が自社のコアとなるソフトウェア製品のコードを共有しつつ、そのビジネスモデルを損なわないように設計されています。たとえ企業がAIを用いてコードを生成している場合であっても、その点は変わりません。

重要なのは、Fair Source が権利者に対して、著作権侵害とは別の執行手段を提供しているという点です。ソフトウェアライセンスは当事者間の契約とみなされ、「契約違反」は著作権侵害とは別個の法的違反であり、「著作権侵害」が成立しない場合であっても適用され続けます。

 


 
Fair Source ソフトウェアのクローンを用いて、そのクローン元のソフトウェアと競合することはできません。

 

  • Sentry は Fair Source ムーブメントを主導する立場にあるため、私たちの立場を明確にしておきます。
  • Fair Source ソフトウェアのクローンを用いて、そのクローン元のソフトウェアと競合することはできません。
  • LLM は単にプロセスを高速化するだけであり、この前提を本質的に変えるものではありません。
  • 技術によってコピーや派生物の作成が容易になったからといって、それが許されることにはなりません。

 

そして、Fair Sourceライセンスは、ソースコードにアクセスした時点で同意する独自の条件を持つ契約であるため、コードの著作権の状態は本質的には問題ではないのです。

現在、知的財産権および人工的に生成されたコードをめぐる状況は、確実に変化の只中にあります。クラウドコンピューティングは、オープンソースライセンスが本来内包していたいくつかの制約を浮き彫りにする技術的転換でした。AI はさらに OSS を根本から揺るがし、OSS とFSS の違いを一層際立たせています。自分のプロジェクトをどのようにライセンスするかについて正しい判断を下すことは、これまで以上に重要になっています。Sentry は Fair Source を全力で推進していきます。

 

 

Original Page: Fair Source Software in the AI age

 

 




IchizokuはSentryと提携し、日本でSentry製品の導入支援、テクニカルサポート、ベストプラクティスの共有を行なっています。Ichizokuが提供するSentryの日本語サイトについてはこちらをご覧ください。またご導入についての相談はこちらのフォームからお気軽にお問い合わせください。

 

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